土井さんの写真のファンである私は、2014年10月10日(金)から26日(日)まで土井弘介さんに私のギャラリー(キング堂ギャラリー<飯田市銀座4>)で写真展を開いていただいた。
題して「ニューヨーク・シティ セレブの肖像|ダリ・ウォーホル・ジルベルトを撮った男」
まだアメリカに憧れが強かった1970年から1980年代の日本を知っている世代にとっては、とてもわくわくする写真展であったと思う。来場者からの「えー」とか、「なつかしい~」といった感嘆の声が聞こえた。ある人は「ピーター・マックスの姿を見ることができただけでうれしい」と言っていた。また、地元紙の文芸担当デスクは「ダリの人間としての一面を土井さんが証言したことは貴重だ」といって、一面のショートコラムに掲載してくれた。一方で、「どうして飯田でこんな写真展ができるんだ!?」という声も複数あった。
いや、飯田だけの話ではない、あの時代にこれだけのアーティストたちの写真を撮ることのできた日本人がいたことが驚きである。それも随分とプライベートなものまであるのだ。映画『フラッシュ・ダンス』の主題歌で名をはせたアイリーン・キャラの写真(写真集『i click! Manhattan』に掲載)は深夜に彼女のアパートで撮影されている(パーティーのあと、仲間たちと立ち寄ったときのもの)。
土井さんのどの写真からもそのときの空気や感情が伝わってくる。しかも、その感情はとても暖かい。“人間どうしの好意の疎通“とでもいえばいいのだろうか。土井さんは被写体にカメラを向け、被写体は土井さんに心を許す。土井さんの写真にはそんな関係性が写っている。人を和ませる天賦、土井さんにはこうした天使のような素養が宿っている。(MJ)
少し驚いたこと、それは土井さんが大々的に写真展を開催したのが、これが初めてだったということだ。写真展が終わったあとにお聞きした。